本当に超久しぶりに読書たるものをしてみたので、その感想など。
今回読んだのは、

桂望実著、「僕とおじさんの朝ごはん」です。
珍しく休みをもらえた日曜日に書店をぶらぶらし、手に入れた一冊です。
最近の小説(?)って、映画やテレビドラマの原作みたいなのが多くてあまり読もうという気になりません…。
そういう書物を避けながら、この本を選んだのでした。これもいずれはドラマ化?
・・・読みやすくて面白かったです。大してやる気を持って生きているわけではない主人公。この生き方、分かります。この主人公の生き方を変えるのは、腰痛で治療を受けていた場所で知り合った男の子です。この男の子は最終的に星になってしまいますが、主人公が学ぶことは多かったようです。無気力無関心無感動のような主人公に嗚咽させる何かを持つほど大きな存在だったのでしょう。
こういうことって、意外に身近に存在すると思います。家族や職場に思いがなくても、何かのはずみで出くわした場所で自分のことを発見すること。こういう瞬間があるのは幸せなことだと思います。そして自分にとって大切な人ができることって、本当にとても幸運です。血がつながっているから当たり前に繋がりがあるのではないんですよね。繋がりって相手が誰であれ自分の心が作るものだと思います。
・・何度となく入院の経験はありますが、確かにトーストや目玉焼きって出てこなかった。盲点です。またこの小説のアイテム、「薬」は、使用されないことによって、生きることの意味を暗示的に教えてくれたアイテムです。
後半から急に話が展開することってよくありますよね。自分の好きな映画、「さびしんぼう」(大林宣彦監督)も、前半はどうでもいい感じだったのに急にきゅんとする展開となっていました。
久しぶりに書の世界に入った瞬間でした。
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- 2017/12/08(金) 00:58:18|
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ちょっとだけ仕事が緩やかになった最近です。
本屋に寄ったら、久しぶりに出くわしました。

ヘルマンヘッセの「車輪の下」。
高校1年生の頃、この本に出会い、読書感想文を提出しました。校内1次選考まで残りました

。
あの頃に読んだ感想と、今の自分では全く異なる感想を持つであろうと思い、敢えて購入し、読破しました。ヘッセの全集は確かうちにあるはずなのですが、持ち歩くサイズではないので、購入に至りました(これも一種の大人買い?)。
あの頃読んだ時は、少々難しく感じたのに、30年近く経った今では割と難なく読めました。
いわゆる優等生の主人公は、周囲に大いに期待されていたのですが、思春期に翻弄されながら破滅的な最期を迎えます。いろんな意味での重圧に耐えられなかったといえばそれまでなのですが、彼の環境が彼の運命を決めてしまったと言っても過言ではないでしょう。
読んでいた頃の自分と重なります。今の自分は拙いながらも自分の身の丈に合った生き方を見つけ、何とか生活しています。この姿を主人公にも見せてあげられたならと思います。
主人公の青年を優しく見守っている自然環境の描写が素敵です。自分は風景の描写が活字で表現されている時には読み飛ばしてしまったりしていたのですが、改めて眼に浮かべると、とても素敵です。
考える読書って、やっぱり良いですよね。
テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌
- 2013/12/15(日) 20:15:02|
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今回は、垣根亮介著『借金取りの王子』(新潮社)を読みました。
かなり以前に彼の『君たちに明日はない』という作品に出会ってます。

これは、いわゆる企業のリストラを代行する会社で働く主人公の物語です。若い主人公ですが、理路整然と自主退職に追い込むのを仕事としている面接官の物語です。作者と自分は年齢も近く、しかも大変読みやすいので、一気に読破しました。
実際のところは企業マンでない自分にとって、「みんなこんなに大変なの?」と驚くことばかりです

(どんだけ世間知らず・・)。今や世間では「リストラ」は珍しくないのかもしれませんが、主人公のように「リストラ」勧告を請け負う仕事があるなんて知りませんでした(って、やっぱり本当にあるのでしょうか?)。
あまり、いや、かなり上司に忠実でない自分は、大企業の一員であったなら、真っ先に抹消されることでしょう。どんなに粗悪な職場でも、今こうしてのほほんと暮らしていける境遇は、世間一般ではかなり恵まれているのかもしれません。いわゆる優等生で一流大学を出て、順風満帆な人生を送る約束をされていた人が、こうして解雇勧告を受ける様は、あまりも残酷であり、また、逆に不謹慎にも滑稽に思えます。人生って一体・・・。
ただ、最近思います。できれば今のぬるま湯でずっと過ごすのも、親孝行で幸せな人生なのでしょうが、何かのきっかけでそれが打ち砕かれることがあったとしたならば、もしかしたら逆に自分にとってのチャンスなのかもって。「死に物狂い」に頑張ることって、完全に忘れているから。何かの拍子に背中を押されたら、自分の人生、大きく変わるほどのことがあるのではないかと、まるで白昼夢のように思い描いています。・・・いい年して、馬鹿かもしれませんが。
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- 2009/11/12(木) 20:43:38|
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今回読んだ本は、『悩む力』姜尚中著 集英社新書 です。
本屋で山積みにされていたので、つい購入しました。別に自分は何かに真剣に悩んでいるということはないのですが、この本は、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱しているということでした。著者は夏目漱石と社会学者のマックスウエーバーを引き合いに出し、持論を展開しています。
自分は夏目漱石、好きです。一番感銘したのは社会人になってから読んだ『道草』でした。主人公が決して何かに納得しながら生きているわけでもない中で、いろんなことに巻き込まれながら、「まあしょうがない」という人生を訥々と綴ったこの作品を『道草』と名付けた漱石に、震えが来たものでした(この本、実は暇潰しにパリのモンマントルの丘で読んだものなんです)。また、ヘルマンヘッセという作家も好きな人でした。『車輪の下』は、メジャーな暗い(

)作品ですが、『デミアン』という小説が一番好きだったんです。
悩み多い青春時代から何も変わらない自分・・・のはずが、気がつけば、周囲には明るく、悩みには縁遠い人しか集まらず

、真の自分の声を聞いてくれる人にはなかなか出会えないのですが、それはそれで幸せなのかもしれません。ただ、「悩む」ことは、人間特有のことであり、大事にしたいものです。それがイコール成長につながることは否めないと思うのです。
学生時代に、結構本を読んだはずなのですが、同時期にブームであったおニャン子クラブからのユニット、ニャンギラスが歌っていた「私は里歌ちゃん」の歌詞は衝撃的なものでした。「与謝野晶子は知らないけれど、パーパラパッパ手の鳴る方へ~」

こういう生き方も、ある意味とても大切なものかもしれません。『悩む力』の著者がこの曲を聞いた後であるならば、述べていることも変わってくる気もします。それはそれで面白いです。
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- 2009/05/22(金) 22:01:31|
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今回読んだのは、『アジア新聞屋台村』高野秀行著 集英社文庫 です。
自分は著者の高野さんという方をあまり知りません。あまり知らないということを前提に感想を・・。
高野さんはあるアジア出身の女性に「コラムを書いてもらいたい」という依頼を受け、ひょんなことから、このよく分からない出版社、「エイジアン」にどっぷり浸かってしまいます。日本の常識では計り知れないような環境の中で奮闘しながらエッセイを書き、時には助言者的役割を果たしています。
この「エイジアン」という出版社には、さまざまな国出身のアジア人が携わっており、おのおのの国の記事を担当しているのですが、「一体こんなことで、収入になりうるのだろうか?」というのが最初に感じたことでした。実は彼らは彼らの母国では普通以上、いや、かなり裕福な生活ができる身分の人達で、「冒険」ということが可能な境遇の持ち主なのです。彼ら皆に共通しているのは、「出版」という仕事に命を懸けていないことです。
仕事に「命を懸けていない」って、実は本当に羨ましいことです。自分自身、今の仕事には不満ばかりであるし、のめりこもうという気はないのですが、それでも、辞めてしまう勇気はありません。しがみついてでも続けない限り、たちまち今の生活は崩れます。それに代わる仕事に就ける才も全くありません。冷静に考えると、非常に怖いです。文句を言いながらも、一応最低限の給料を貰っている自分はある意味「安定した幸せ者」なのかもしれません。
年を重ねるごとに、自分の力の限界を感じないではいられません。ものすごく悩んでいる訳ではないにしても、もはや「夢」を追い続けるには無理がある世代でもあります。やりたいことを堂々とやるのが自分の行き方ではありますが、「収入」を無視するわけにはいきません。
そういう意味でも、この「エイジアン」で働く若いアジア人に対しての羨望感を否めません。若いっていいよな。若くて、いざ何かあったときに、親の財力があるっていいよな・・と、羨みっ放しです(この地点でおっさん!?)。
そんな中で日本の常識と戸惑いながらも奮闘した高野さんに拍手です。
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
- 2009/05/13(水) 21:25:00|
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